理事長挨拶

理事長挨拶

板倉 弘重

ポリフェノールは、野菜、果物、茶、コーヒー、ココアなど日常的に摂取している食品に含まれている成分で、生体に様々な生理的機能を果たしていると考えられるが、まだ未解明のところが多く、人体栄養学のなかでもこれからの課題が多く残されている領域であると考える。

ポリフェノールの基礎的研究から、構造の解明が進み、構造特性から抗酸化機能、抗炎症作用、抗菌作用、抗腫瘍効果、抗動脈硬化などの研究が進められ、その機能を生かした食品作りも広がっている。

個別のポリフェノールについては、分子生物学的研究、動物実験から、ヒトでの臨床研究など広く研究が進められ、成果もあがっている。しかし、健康の維持・増進、疾病予防・治療に、ポリフェノールを有効に生かしていくためには、ポリフェノールに関する多くの研究を統合して、その摂取量と有効性および安全性、ほかの食物成分や薬剤との相互作用などを解明していくことが大切であると考えられる。

日本ポリフェノール学会の活動を通して、ヒトの健康におけるポリフェノールの役割を明らかにして、ヒトの健康維持・増進を図りたいと考える。

初代理事長の挨拶

家森 幸男

このたび「ポリフェノール研究会」が、栄養、医学、薬学、体育学、農芸化学、理学、工学など多岐にわたる御専門の方々が一同に会して発足しますこと、心からおよろこび申し上げます。この研究会の発足に際し、馳せ参ずべきところですが、あいにく国際医療学会の講演の指名をうけておりましたので、まことに残念ですがはたせません。幸い、本研究の発足に際しましては、東京大学名誉教授の細谷先生がリーダーシップをとってくださいましたおかげで、このように学際的な研究会が成立することになったと心から感謝しております。

私自身はポリフェノールの専門家ではございませんが、「食はいのち」と申しますように、健康を支え健康長寿を実現する食のパワーを確信しております。それは脳卒中を100%おこす遺伝子をそろえもった脳卒中のモデル動物でも栄養によって脳卒中が予防出来たことにはじまり、世界61地域の疫学研究でも寿命を決定するような心筋梗塞でも、LDLコレステロール以上に大豆イソフラボンや魚介類のDHA、タウリンなどのバイオマーカーと関連し、ポリフェノール摂取にも大きく影響されることを見て参りました。

世界中で生活習慣病が蔓延し、高齢化のトップを行く日本では、とりわけその影響が大きく医療保険制度も維持出来なくなるような厳しい現状に直面し、この食の生活習慣病予防機能をフルに活用しない手はないわけです。とりわけこれまで世界の長寿地域の人々が恩恵に浴して来たポリフェノールを「安全に安心して活用出来る」ようにするには科学的根拠、エビデンスが必要で、まさに学際的な研究が必要です。

ポリフェノールの一種である大豆イソフラボンについては安全委員会の答申は随分物議をかもしましたが、科学的根拠のとらえ方が必ずしも学際的に納得出来るものではなく、国民にも不安を与えました。ポリフェノールについて再びこのようなことがあってはなりません。

そのために産・学のみならず“官”を含め、さらに消費者の立場の“民”も入れて、産・学・官・民が共通の場をもってポリフェノールの「安全で安心して活用しうる科学的根拠」を得て、世界的に増加している生活習慣病のリスク軽減に貢献することを心から願っております。 本会の発足にあたって、広い分野、様々な御専門の皆様方に全国各地よりお集まりいただきましたこと、重ねて御礼申し上げ「ポリフェノール研究会」の今後の発展に引きつづき御協力いただきますようお願い申し上げます。